「なにか」が起こったときの自衛隊の活動~【その3】武力の行使・武器の使用
「なにか」が起こったときに国民、治安を守る
「なにか」が起こったときの自衛隊の活動
○防衛出動:日本が武力攻撃を受けたときなどに、日本を守る
○国民保護等派遣:日本が武力攻撃を受けたときなどに、国民を保護する
○治安出動:警察の力では治安の維持ができないときに、治安を守る
○災害派遣:災害が起こったときに、救難、救助、支援をする
これまで、「災害派遣」「防衛出動」のお話をしましたので、今回は残りの2つ。「国民保護等派遣」と「治安出動」です。
こちらの2つは、上記のとおり
国民保護等派遣→日本が武力攻撃を受けたときなどに、国民を保護する
治安出動→警察の力では治安の維持ができないときに、治安を守る
なのですが、ここでぜひ少し知っておいて欲しいことがあります。それは、「武力の行使」と「武器の使用」の違いです。
防衛出動の「武力の行使」とは別モノの「武器の使用」
>>「なにか」が起こったときの自衛隊の活動~【その2】防衛出動
では、「自衛隊が『武力の行使』をすることができるのは、『防衛出動』のときのみ」とお勉強しました。
ですので、「国民保護等派遣」や「治安出動」など、「防衛出動」以外の活動で「武力の行使」をすることはできません。
しかし、「国民保護等派遣」や「治安出動」、「海賊対処行動」、「PKO活動」、「対領空侵犯措置」そしてミサイルへの対処などの活動では、状況によって「武器の使用」が認められています。
では、この「武力の行使」と「武器の使用」はどう違うのでしょうか。
「組織的な戦闘行為」と「武器を使用すること」
「武力の行使」は、組織的な戦闘行為で行われるものです。
そして、「武器の使用」は、そのまま武器を使用すること。
例えば、桃太郎さんが道を歩いていると「お前を殺してきびだんごを奪ってやる!」と鬼が襲いかかってきたとします。すると、桃太郎さんが自分の身を守るために鬼に刀を振り下ろした……と、この場合は「武器の使用」です。
一方、鬼ヶ島から鬼軍団がやってきて、桃太郎さんの住む村を侵略しようとしたときに、桃太郎さんや犬、猿、キジたちで組織された「桃太郎軍」が鬼軍団と戦闘をして侵略を防ぐ……と、これが「武力の行使」。
なんとなくお分かりいただけたでしょうか。
武器の使用をし、私たちを守ってくれる警察
桃太郎さんは、刀という武器を持っているので、「お前を殺してきびだんごを奪ってやる!」と鬼が襲い掛かってきても自分で対処することができます。
しかし、私たちは普段、武器を持ち歩いていませんし、銃刀法といった法律も守らなくてはいけません。
そこで、私たちの代わりに武器を持ち、守ってくれているのが警察官です。警察官は、「警察官職務執行法」というものの第七条「武器の使用」に定められているとおりに「武器の使用」をします。
警察、そして自衛隊の「武器の使用」
しかし、警察にもやれることには限界があります。例えば、ミサイルへの対処。
前回の
>>ミサイルが飛んで来たら……どう身を守る?迎撃は?
でもお話しましたが、日本に向けてミサイルが発射された場合には、ミサイルを破壊する対処をします。
でも、残念ながら警察にその装備や操作する人はいません。ですので、弾道ミサイルには警察ではなく自衛隊が「PAC-3(パックスリー)」や「イージス」といった迎撃のための「武器の使用」をします。
スクランブル発進でも認められている「武器の使用」
また、対領空侵犯措置も同じです。
>>今さら聞けない素朴なギモン~自衛隊って普段はなにをしているの?【1】
でお勉強したように、日本の領空へ不法に入って来ようとする航空機には、スクランブル発進をして対処しなければなりませんが、警察に戦闘機はありません。
ですので、対領空侵犯措置も警察ではなく自衛隊が担当していて、正当防衛・緊急避難の場合に「武器の使用」をすることが認められています。
「国民保護等派遣」や「治安出動」、「海賊対処行動」、「PKO活動」も同様です。
国民を守るため、自分の身を守るため、任務を行うため必要なときに、自衛隊は「武器の使用」をします。
「自衛隊」というと、「国民の生命と財産を守るために戦う」といった印象が強いので、自衛隊が武器を使うときはいつでも「武力の行使」をイメージしてしまう方も多いと思います。でも、実は自衛隊には「武力の行使」ではない「武器の使用」が認められている任務もたくさんあるんです。
頭に入れておけば、自衛隊の活動がより分かりやすくなります
では、今回のおさらい。
「武力の行使」が認められている→防衛出動のみ
「武器の使用」が認められている→国民保護等派遣、治安出動、海賊対処行動、PKO活動、対領空侵犯措置、ミサイルへの対処など
「武力の行使」と「武器の使用」の違いは少し難しく、テレビ番組のコメンテーターのような方でも混同されていることがあります。
でも、すっきり理解して頭に入れておくと、自衛隊の活動、そしてそれに関する報道が分かりやすくなると思いますよ!
画像引用:陸上自衛隊HP/海上自衛隊HP/航空自衛隊HP
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