女子にも分かる自衛隊

「駆け付け警護」ってなに?


「武器の使用」が認められている活動のひとつ、「駆け付け警護」

前回の
>>「なにか」が起こったときの自衛隊の活動~【その3】武力の行使・武器の使用
では、「武力の行使」と「武器の使用」の違いをお勉強しました。

昨年、平和安全法制(報道では「安保法制」と呼ばれることもあります)が施行されましたが、この中でいわゆる「駆け付け警護」が新たな任務となりました。この「駆け付け警護」も、「武器の使用」が認められている活動です。

「駆け付け警護」という言葉は、テレビなどで耳にしたことがある方も多いと思います。
しかし、前回もお話したように「武力の行使」と「武器の使用」の違いが少し難しかったりして、テレビなどを見ていてもよく理解できなかった方もいらっしゃるのではないかと思います。

そこで今回は、この「駆け付け警護とはなんなのか」というお話です。

駆け付けて警護をするのは、NGOや国連職員さんたち

これまで、数回にわたって
○防衛出動:日本が武力攻撃を受けたときなどに、日本を守る
○国民保護等派遣:日本が武力攻撃を受けたときなどに、国民を保護する
○治安出動:警察の力では治安の維持ができないときに、治安を守る
○災害派遣:災害が起こったときに、救難、救助、支援をする
といったように、「自衛隊はどんなときにどんな活動をするのか」をお勉強してきました。

では、駆け付け警護の「どんなときにどんな活動をするのか」はなにかというと、
「PKOで、NGOや国連職員のみなさんが危険な状況に陥ったときに、駆け付けて警護をする」
です。
では、詳しく見ていきましょう。

PKOの現場で、自衛隊とともに汗を流すNGOや国連職員


自衛隊の活動に、PKO(国連平和維持活動)というものがあります。少し前まで、南スーダンでPKOが行われていたので、テレビなどで「南スーダン」、「PKO」という言葉をセットで耳にした方も多いかと思います。

PKOとは、世界各地での紛争を解決するため、「停戦の監視」や「文民の保護」などといった活動を、国連が主導し各国が協力して行う活動です。
日本もこのPKOに参加しているんですが、自衛隊がPKOをするとき、現地で日本のNGOや国連職員のみなさんとも協力することがあります。

NGOとは、Non-governmental Organizationの略で、日本語では「非政府組織」。地球環境問題や人権問題、そして途上国の貧困問題などに取り組んでいる団体です。

紛争などで援助が必要となった国や地域……こういったところで自衛隊がPKOを行っているのですが、同時に同じ地域でNGOや国連職員のみなさんもその国や地域のためにさまざまな問題に取り組んでいることがあります。
自衛隊とNGO、国連職員のみなさん……立場や活動内容は違いますが、現地の困っている人々のために、活動現場で情報交換をしたりして連携を図りながら、ともに汗を流しています。

「武器の使用」ができる自衛隊。しかしNGOや国連職員は……


PKOを行っている地域には、治安の良くないところもあります。そこで、自衛隊は限られた範囲での「武器の使用」が認められています。

しかし、NGOや国連職員のみなさんはそうはいきません。自衛官は日ごろから武器を使う訓練をしていますが、NGOや国連職員のみなさんはそうではありません。

もしも、治安の良くない地域で、NGOや国連職員のみなさんに危険なことが起きてしまい、自衛隊が助けを求められたら……。
ということで、
「PKOで、NGOや国連職員のみなさんが危険な状況に陥ったときに、駆け付けて警護をする」
という「駆け付け警護」が自衛隊の任務に加わりました。

とはいえ、「駆け付け警護」が可能となる前も、「NGOや国連職員が危険な目に遭ってるのに自衛隊はまったくの知らんぷり」だったワケではありません。
では、「駆け付け警護」が任務に加わって、以前とどう変わったのでしょうか。

「駆け付け警護」で可能となったこと。キーワードは「管理下」

「駆け付け警護」が任務となる前と、今とでの違いは、

前:助けられるのは、危険なことが起きたときに自衛隊の管理下にいる人たちだけだった
今:自衛隊の管理下ではない人たちのところに駆け付けてでもも、助けられるようになった

です。
ざっくりいうと、「自衛隊と同じグループとして活動しているときは以前から助けられてたけど、同じグループじゃないときも助けられるようになった」という感じですね。
「自衛隊がPKOやってる地域でNGOや国連職員などのみなさんが危険な目に遭って要請を受けたら、可能な範囲で自衛隊が助けに行きますよ」……と、これがいわゆる「駆け付け警護」です。

「駆け付け警護」ができなかった1994年のある事件


自衛隊はこれまで多くのPKOを行ってきましたが、コンゴ民主共和国が「ザイール共和国」と呼ばれていた頃に、ある事件が起きたことがあります。

1994年、ザイール(当時)の難民キャンプで活動していた日本のNGOの車が、難民に強奪されてしまいました。
このとき、同じ地域で自衛隊もPKOを行っていて、NGOは自衛隊に救援の要請をしました。

しかし、この当時は「駆け付け警護」はしてはいけませんでした。
「NGOが、危険なことが起きたときに自衛隊の管理下にいなかった」
ので、NGOの方々を警護するための法律や制度がありませんでした。ですので、自衛隊はこのNGOの皆さんを「警護」することはできせんでした。

とはいえ、自衛隊も知らんぷりするわけにはいきません。ともに異国でがんばっている日本人なのに、「自衛隊は自衛官しか守らないよ。武器を使用して守るのは自衛官だけだよ」というのではあまりにも悲しすぎます。

そこで、当時の自衛隊の現地部隊は、NGOの人たちを「輸送」しました。「警護」はNGだったので、「輸送」をしました。
すると日本で、「『輸送』という名目で、やってはいけない『助ける』をした!」と問題になりました。法律や制度でNGなことをした、と問題になりました。

このような経緯があり、新たな任務となったのが、「駆け付け警護」です。

「駆け付け警護」で自衛官のリスクは上がった?


テレビなどの報道では「駆け付け警護が任務となったことで、自衛官のリスクが上がった」という意見を耳にすることがあります。

自衛官との婚活を考えているみなさんも、彼や夫となる自衛官の「リスク」は当然気になるでしょうし、「リスクが上がる任務」と聞くと不安になるかと思います。

しかし、私は
「駆け付け警護が法律や制度に基づく任務となったことで、自衛官のリスクは下がった」
と感じています。
というのも、法律や制度がなければ、しっかりとした訓練ができないからです。

リスクを下げるためには、しっかりと訓練をしなければなりません。災害派遣など、どんな活動でも「リスク」を下げるためには、しっかりとした訓練が必要なんです。
そして、しっかりとした訓練には「自衛隊はどんなときにどんな活動をするのか」を明確にした法律や制度が欠かせません。
「どんなときにどんな活動をするのか」が分からなければ、どんな訓練をすればいいのか、どんな訓練をすれば安全に任務が行えるのかが分かりませんから。

リスクを下げるために、必要なこと


上記の、1944年のザイール(当時)でのNGOの人たちを助けた「輸送」。
「駆け付け警護」が任務になかった時代なので、そんな状況での「輸送」は、事前にしっかりとした訓練をできないまま行われたことと思います。
しっかりとした訓練をしないまま行った、危険な活動……こちらの方が、よほど「高いリスク」です。

しかし今は、法律・制度で「駆け付け警護」という任務ができ、しっかりとした訓練を行っています。
しっかりとした訓練は、「しっかりと任務を遂行する」だけでなく、「リスクを下げる」ことにもつながります。

自衛隊の活動に「リスクがまったくない」ものはありません。だからこそ、安全に任務を行うために法律や制度の整備が行われています。

自衛隊の活動を理解すると、彼や夫のお仕事もより深く理解できるようになると思います。
彼や夫の身が心配になるのは自然な感情ですが、少しでも「理解」を深めると、不安な気持ちをこれまでとは違った感情にすることができるかもしれませんね。

画像引用:陸上自衛隊HP海上自衛隊HP航空自衛隊HP
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2017-09-22 | 女子にも分かる自衛隊

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