女子にも分かる自衛隊

「なにか」が起こったときの自衛隊の活動~【その2】防衛出動


武力攻撃を受けたときなどの活動「防衛出動」


「なにか」が起こったときの自衛隊の活動
○防衛出動:日本が武力攻撃を受けたときなどに、日本を守る
○国民保護等派遣:日本が武力攻撃を受けたときなどに、国民を保護する
○治安出動:警察の力では治安の維持ができないときに、治安を守る
○災害派遣:災害が起こったときに、救難、救助、支援をする

このうち、前回は「災害派遣」についてお勉強しました。では、今回は「防衛出動」のお話をします。

防衛出動はざっくりいうと「日本が武力攻撃を受けたときなどに、日本を守る」という活動です。前回の
>>「なにか」が起こったときの自衛隊の活動~【その1】災害派遣

では、
・自衛隊はすべての災害で災害派遣活動を行うわけではない
・どういう災害で災害派遣を行うかは、公共性、緊急性、非代替性の3つの基準による
・基本的には、要請があったときに災害派遣活動が行われる
というお勉強をしましたが、「防衛出動」にも同じような決まりがあります。

防衛出動をするときは、こんな「事態」のとき

どんなときに防衛出動を行うのか。ざっくりいうと「日本が武力攻撃を受けたときなど」なのですが、法律では「どんな事態のとき」と詳しく定められています。

防衛出動を可とする「事態」には2つの種類があります。
○武力攻撃事態
○存立危機事態
です。

法律に出てくる言葉はとても難しいので、少しずつ掘り下げてみましょう。

日本が武力攻撃を受けたとき、明らかに危険なときの「武力攻撃事態」

まず、ひとつめの「武力攻撃事態」。これは、法律には
【武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態】と書かれています。

難しい言葉が使われていますが、要は
・日本が武力攻撃を受けてしまった
・日本が武力攻撃を受ける明らかな危険が迫っている
という状態です。

日本が武力攻撃を受ける……そんなことは絶対に起こって欲しくないのですが、もし起こってしまったらとても大変なことになります。私たちの生活に大きく関わりますし、場合によっては命に関わることにもなりかねません。
そこで、武力攻撃が起こってしまったり、起こりそうな危険がはっきりしていたら、自衛隊が防衛出動という活動を行い、日本を守ります。

防衛出動したときのみに認められている「武力の行使」

では、武力攻撃事態のときに自衛隊が防衛出動をすると、どんな活動をして日本を守るのでしょうか。

日本が武力攻撃を受けてしまったら、私たちの生活や命を守るために、武力攻撃を排除しなければなりません。そのために必要になってくるのが「武力の行使」です。
日本を武力攻撃する人たちに「やめてください」とお願いして、やめてくれればそれが一番なのですが、武力攻撃をするくらいの人たちですからその望みは限りなくゼロに近そうです。

そこで、自衛隊は「防衛出動」で「武力の行使」をすることが認められています。
武力攻撃事態になり、防衛出動をすることになれば、自衛隊にある銃や大砲、ミサイルなどの武力を使って、「武力攻撃を排除する」という活動をします。

自衛隊が「武力の行使」をすることができるのは、「防衛出動」のときのみです。
防衛出動以外の活動では、「武力の行使」をすることはありません。

(別の活動では、私たちを守るため警察のように「武器の使用」をすることは認められていることがあります。この「武力の行使」と「武器の使用」の違いについては、また後日改めてお話したいと思います)

もうひとつの防衛出動、「存立危機事態」

……と、防衛出動を可とする「事態」のひとつめ、「武力攻撃事態」について少し掘り下げました。
防衛出動を可とする「事態」にはもうひとつ「存立危機事態」があります。これはどういうものかというと、法律にはこう書かれています。

【我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態】

とってもややこしいですよね。この存立危機事態がなぜこんなにややこしいのかというと、憲法を守るためです。
みなさんもテレビなどで「集団的自衛権」という言葉を聞いたことがあると思いますが、存立危機事態はこの集団的自衛権が関わっています。

個別的自衛権、集団的自衛権、ふたつの「自衛権」


ここで少し「自衛権」のお勉強をしましょう。

「自衛権」とは「自国を防衛するために武力を行使する権利」です。
そして、自衛権には「個別的自衛権」と「集団的自衛権」とがあります。どう違うのかというと、
○個別的自衛権→自国を防衛するために、「自国を攻撃する国や組織へ」武力を行使する権利
○集団的自衛権→自国を防衛するために、「他国を攻撃する国や組織へ」武力を行使する権利
です。
個別的、集団的に関わらず、どちらの自衛権も世界中の国が持っている権利です。

しかし、「自衛権の行使」となると話はちょっと変わってきます。日本には憲法9条があるので、「自衛権は持っているけど、その行使は限定的」とし、憲法を守っています。

〝限定的〟な集団的自衛権の行使

さて、「防衛出動」を可とするふたつの事態
○武力攻撃事態
○存立危機事態

「武力攻撃事態」は、「日本への武力攻撃が起こった(起こりそうなことがはっきりしている)」なので、武力攻撃事態のときに武力を行使するのは、「個別的自衛権の行使」です。

一方、「存立危機事態」は「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し」なので、存立危機事態のときに武力の行使をするのは、「集団的自衛権の行使」です。

しかし、先ほどもお話したように、憲法9条を守るためにその行使は「限定的」です。
ということで、存立危機事態には「集団的自衛権の行使」が「限定的」であることが明記されているので、

【我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態】

というとってもややこしい書き方になっています。

存立危機事態をすっきり理解しましょう

とってもややこしい存立危機事態ですが、少し簡単に理解する方法があります。

存立危機事態の中にある
「国民の生命、自由及び幸福追求の権利」
という一文にご注目。こちらは、憲法13条に出てくる文章です。
憲法13条には、「国民の生命、自由及び幸福追求の権利は最大の尊重をしましょう」といったことが書かれています。

ので、存立危機事態は
「日本と密接な関係のある他国に武力攻撃が起こった」ことにより
→日本の存立が脅かされる
→憲法13条を守れなくなるはっきりした危険がある
という事態……と理解すると、少し分かりやすくなりますよね。

身の危険を伴う、武力。不安になるのはとても自然なこと

武力攻撃事態、存立危機事態で行われる自衛隊の活動、「防衛出動」。
武力が関わるとても重要なことなので、防衛出動は国会の承認、内閣総理大臣の命令という手続きがあって行われます。

武力攻撃、武力の行使には、言うまでもなく自衛官の身の危険が伴います。
日本が武力攻撃を受ければ私たちも危険な状況になるのですが、その中で自衛官の彼や夫は「私たちを守る」という活動でさらに身の危険が伴います。
自衛官のご家族は、多かれ少なかれの不安を抱えています。

「身の危険」から、息子さんや娘さんが「自衛官になりたい」と言ったときに反対される親御さんもいらっしゃいます。
「できれば自衛官を辞めて欲しい」と思う奥様やお子さんもいらっしゃいます。

それは、とても自然なことだと思います。

しかし、そんな身の危険がありながら、なぜ自衛官たちは自衛官を続けているのか……自衛官の彼や夫とゆっくりお話して、気持ちに寄り添っていくと、彼女さんや奥様の不安も別の気持ちに変わっていくかもしれませんね。

画像引用:陸上自衛隊HP海上自衛隊HP航空自衛隊HP
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2017-07-27 | 女子にも分かる自衛隊

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