自衛官はどんな思いで陸海空を選んだの?
「自衛官になる!」そして迫られる次の選択
前回の
>>苦しく危険な仕事を選ぶ自衛官の思い
では、自衛官たちがなぜ苦しく危険な仕事を選んだのかというお話をしました。
「自衛官になろう」。そう決めたら、次にまた選ぶことがあります。それは、「陸上自衛隊・海上自衛隊・航空自衛隊のどれに入隊するか」です。
ではまず、自衛隊の入隊試験について簡単に解説しましょう。
受験時から陸・海・空を選ぶ場合
自衛隊の入隊試験には、いくつかの種目があります。任期制で勤務したいのか、それとも曹という階級になって定年まで勤務したいのか、もしくは幹部として勤務したいのかといった希望に合わせて、受験の種目を選びます。
任期制の場合は「自衛官候補生」、曹を目指す場合は「曹候補生」、幹部になる場合は「幹部候補生学校」を受験するのですが、これらは陸・海・空ごとに募集しているので、「よし、僕は海上自衛隊の曹候補生を受験しよう」というように、受験時に陸・海・空のどれかを選びます。ひとつだけを受験する人もいますし、陸・海・空を併願する人もいます。また曹候補生と幹部候補生学校を受験……というように、種目を併願することもできます。
入校後に希望を出す防衛大学校
自衛官候補生、曹候補生、幹部候補生学校は受験時から陸・海・空が分かれているのですが、そうではない場合もあります。例えば、防衛大学校です。
防衛大学校は、陸・海・空関係なく受験し、入校します。そして1年生が終わるころに陸・海・空のどれに入りたいか希望を出し、2年生から陸・海・空それぞれに分かれて授業や訓練が行われます。
防衛大学校の学生は、卒業すると幹部候補生学校に進み、幹部自衛官となります。ですので、同じ学年で陸・海・空に進む人数に偏りが出ないよう、それぞれの人数は決まっており、この人数に合わせて振り分けられます。そしてこの人数をもとに、本人の希望と適正で陸・海・空のどれに入隊するのかが決まります。
希望は100%叶えられる?!
と、ここでクイズです。
~希望を出し、適正と人数の振り分けで決まる陸・海・空の進路ですが、全員の希望が必ず、100%通ります。それは、なぜでしょう?~
みなさん、分かりますか?このクイズ。私はこれまで自衛官にも自衛官ではない人にもたくさんの方にこのクイズを出しているのですが、正解できた人は過去にたったの一人だけです。「人数の振り分け」という絶対条件があるにも関わらず、全員の希望が必ず、100%通る……それはなぜなのか……ぜひみなさんも考えてみてください。
複雑な気持ちも、心新たに受け入れる
では、答えです。希望を出し、適正と人数の振り分けで決まるのに、なぜ全員の希望が必ず、100%通るのか……それは、「希望を出すときに、第一希望から第三希望まで書くから」です。ちょっと意地悪なクイズでしたね。ごめんなさい。
このように、自衛官候補生、曹候補生、幹部候補生学校とは違い、防衛大学校の場合は、第一希望で陸上自衛隊を出しても、第三希望の航空自衛隊に入隊する……ということもあります。実際に自分が第三希望のところに進むと決まったとき、あっさりとそれを受け入れる学生もいれば、少し複雑な気持ちを持ってしまう学生もいるとのこと。でもみなさん、「自分の適性はそこにあるんだから、その道で頑張ろう」と気持ちを入れ替えて、進路を受け入れるようになるんだそうです。
陸・海・空を選んだ理由は?
自衛官候補生、曹候補生、幹部候補生学校の陸・海・空の選択、そして防衛大学校での第一希望の選択。どんな思いでその選択をされたんだろうと、自衛官のみなさんに理由を聞いてみました。そして、こんな回答をいただきました。
「船に乗りたくて、海上自衛隊に」、「戦闘機に携わりたいので、航空自衛隊に」……こういった回答もあれば、ある陸上自衛官の方からは「地に足が付いてるから」という回答もいただきました。「戦車乗りになりたかった」、「レンジャーに憧れて、陸上自衛隊を選んだ」という方もいらっしゃいました。
人との出会いも選択のきっかけに
また、「誰かの影響を受けて」という回答も多くありました。「父が海上自衛官なので、自分も海上自衛隊に」という方、逆に「父が陸上自衛官、姉が海上自衛官なので自分は航空自衛隊にした」という方も。「慕っている大学の先輩が陸上自衛隊に入ったので、自分も迷わず陸を選んだ」という方もいらっしゃいました。
「誰かの影響」では、受験時にアドバイスなどをする担当広報官の影響もよくあるようです。例えば、担当広報官が海上自衛官だったら、「海上自衛隊はいいよ」と勧められて海上自衛隊を選んだ……といった感じです。自衛官は自分の仕事に誇りを持っている人が多いので、担当広報官の方も自分の所属を勧めたくなるんじゃないかと思います。
また、ある防衛大学校出身の方は、「航空自衛隊に行きたくて防衛大学校に入校したけど、2学年上の先輩がすごく尊敬できる人で、その人が陸上自衛隊に決まっていたから、自分も陸上自衛隊を第一希望にした」と言われていました。
陸・海・空の選択にはさまざまなドラマがある
さまざまな思いを持って、またいろんな人との出会いから進路が決まる、陸・海・空。その選択には、自衛官みなさんにそれぞれのドラマがあります。
「なんで陸上(海上、航空)自衛隊を選んだの?」
みなさんも、パーティーなどで知り合った自衛官にこの質問をすると、お相手がどんなことを思っているのか、これまでにどんな人と出会ってどんな経験をしたのかなど、いろんなお話が聞けると思います。
自衛官と会う機会ができたときは、話題のきっかけ作りに、またお相手をより知るために、みなさんもぜひこの質問をしてみてください!