自衛官と結婚して良かったこと・悪かったこと~④官舎
万が一に備えるため、自衛官には官舎がある!
「自衛官と結婚して良かったこと・悪かったこと」、4回目。今回は、「官舎」についてのお話です。
「官舎」とは、自衛官のための社宅のようなもの。駐屯地・基地の近くには、自衛官やご家族が暮らす官舎があります。
自衛隊は万が一の災害や有事に常に備えている組織です。ですので、自衛官は休日であっても、何かが起こったらすぐに勤務場所に駆け付けなければなりません。
そのため、自衛官には「指定場所に居住する義務」があります。自衛隊法第55条に「自衛官は、防衛省令で定めるところに従い、防衛大臣が指定する場所に居住しなければならない」と書かれています。
好きな場所に住めない自衛官・ご家族
自衛官は、独身時代は駐屯地・基地にある「営内」と呼ばれる寮や、艦艇の中で暮らしていても、結婚などを機に部隊長の許可を得られれば、営外(営内ではない場所)に住むことができます。とはいえ、どこでも好きな場所に住むことはできません。
私たちは、都市部の会社に勤務している場合でも、「会社の近くは家賃が高いから、少々通勤に時間がかかっても、都市部から離れた家賃の安い地域に住もう」という選択ができますよね。趣味や環境の好みで「会社からは遠いけど海の近くに住みたい」といった希望も叶えられます。
しかし、自衛官やご家族はその選択ができません。何かが起こったときに、すぐに勤務場所に駆け付けられるよう、勤務場所からある一定の範囲内に住まなければなりません。
官舎は自衛官とご家族の負担を減らします
「この範囲の中にしか住めない」となった場合。そのエリアに、家賃のお手頃な賃貸マンションがあればいいのですが、都市部では高額な家賃の部屋しかない場合もあります。地方でも「家族全員が暮らせる広さの部屋に空きがない」という場合もあるかもしれません。
>>自衛官と結婚して良かったこと・悪かったこと~②転勤
では、「転勤は自衛官に付き物である」というお話をしましたが、転勤の度に大変な部屋探しを迫られるのはご家族にも負担が掛かりますし、経済的な負担も大きくなってしまいます。
そこで、自衛官とご家族のために「官舎」が用意されています。
通勤時間が短いからご家族も安心!
「官舎」に住むメリットは大きく2つあります。ひとつは「勤務地と家が近い」こと。駐屯地・基地によっては、すぐ隣に官舎が並んでいたりしますし、「すぐ隣」とはいかないまでも、たいていは近隣に官舎が用意されています。タイミングによっては、最寄りの官舎に空きがなく、少し離れた官舎から通わなければならない場合もありますが、「何かが起こったときにすぐに勤務場所に駆け付けられる場所」なので遠距離の官舎に住むことはありません。
ご主人の通勤時間が長いと、家族で一緒に過ごす時間が削られてしまいます。子育てや家事などの面でも、ご主人に頼ることが難しくなります。「勤務地と家が近い」のは、自衛官のご主人にとっても、ご家族にとっても大きなメリットですよね。
家賃の安い官舎!しかし……?!
「官舎に住むメリット」のもうひとつは、「とっても経済的!」。築年数や間取り、地域によって差はありますが、官舎の家賃はとても安いです。経済的なメリットは、結婚生活においてとってもありがたいことですよね。
と、官舎の大きなメリットを2つ挙げましたが、もちろんデメリットもあります。ここで、ある自衛官妻さんの声をご紹介しましょう。
「転勤先が決まって、運良く駐屯地のすぐ近くの官舎に入れることになったの。家賃も安いから安心して引っ越したんだけど……すっっっっっっっごく古くてボロい官舎で、泣きそうになっちゃった。住み始めたけど嫌で嫌で我慢できなくなって、結局、近くの賃貸マンションに引っ越したよ」
古さを我慢すれば貯金できます!
こちらの自衛官妻さんの声。これ、残念ながらレアケースではなく、よく聞くお話です。官舎はとっても安いですが、安いなりの理由はあります。以前、知人の自衛官のご自宅(官舎)にお邪魔させて頂いたのですが、昭和52年生まれの私ですら「こんな部屋見たことない……」と絶句するような設備の古さでした。近隣のマンションと比べると、とっても安い家賃なのですが、もし自分がここに住むことを考えたら……私も「家賃は高くてもいいからきれいなマンションに引っ越す」という選択をするかもしれません。
しかし、物は考えようです。官舎に住んで家賃を抑えればその分貯金ができます。マイホーム購入の資金作りは、きれいなマンションに住むよりも早く達成できるでしょう。新婚のうちは、「納得できない古さだけど、マイホームを買うまで○年ガマン!」という目標を立てて、どんなマイホームにするか夢を膨らませるのも素敵だと思います。
そして官舎ならではの「ご近所付き合い」
驚くような築年数の官舎が多い一方、もちろん建てて年数の浅い新しい官舎もあります。古い官舎と比べると家賃もそれなりに上がってしまう場合もあるでしょうが、新しい官舎はごく普通に快適に暮らせると思います。
しかし、新しい官舎を希望しても入れるかどうかは運次第です。前に住んでいた人が別の場所に引っ越すタイミングにもよりますし、希望者も多いでしょうから。
そして、官舎に住むメリット・デメリットどちらともいえるのが「ご近所付き合い」です。官舎には、一般的なマンションのような管理会社がありません。そのため、草刈りや敷地内の清掃といった官舎にまつわるすべてのことを「自分たちでやる」ことになります。ですので、ご近所づきあいは深くなります。
ご近所付き合いはメリット?デメリット?
また場合によっては、「隣近所のご家族がご主人の上司や同僚、部下だらけ」ということもあります。ご近所づきあいにご主人の職場の事情が絡んできます。
このご近所付き合いがどうしても嫌で、「官舎には絶対住みたくない」という自衛官妻さんもいます。「私は別にいいんだけど、旦那が嫌がってるから賃貸マンションに住んでる」という人もいます。
しかし一方で、「入る前は面倒だなーと思ってたけど、実際はそこまで面倒なお付き合いはないよ。私が面倒なことは、きっと周りも面倒だと思ってるんだよね。だからお互いに深入りしないよ」という声も。「官舎ですごく気の合うママ友ができて、子供同士も仲良しでいつも遊んでるよ」という人もいますし、「官舎の人間関係はわずらわしいといえばわずらわしいんだけど、旦那が災害派遣に行ったときは奥さん同士で話せて、心細さが落ち着いた」という声もありました。
官舎暮らしも悪くない!
今日は、官舎にまつわる「良かったこと・悪かったこと」のお話でした。
お聞きした自衛官妻さんたちの声をまとめると、「古かったり、人間関係のわずらわしさはあるけど、でも家賃の安さはすごい魅力!でも古すぎたり、どうしても気の合わないご近所さんがいたりすると、いくら家賃が安くても……」といったところでしょうか。
ある自衛官妻さんは、「バイトだと思えば官舎も悪くない」と話してくれました。「近所の賃貸マンションで部屋探ししたら、今住んでる官舎より家賃が○万円くらい高かったの。だから、私は『毎月○万円もらって官舎に住むバイトをしてる』って考えるようにしたの。そしたら官舎暮らしも悪くないって思えるようになったよ」。
月給○万円の「官舎暮らしバイト」。官舎か賃貸マンションのどちらを選ぶかで悩んだら、この金額を調べてみると参考になるかもしれませんね!
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