まだまだある!自衛隊のお仕事
専門ごとに分かれている、「職種」「職域」
「意外と知られてない?!自衛官のお仕事」でもちらっと触れましたが、自衛隊には「職種」「職域」というものがあります。
これは一体なんなのかというと、「専門部署」「自分の担当する仕事」のようなものです。
企業でも「総務部」「経理部」「営業部」「広報部」と専門部署が分かれていますが、自衛隊も専門職ごとに部隊があります。
「自衛官」というと、戦闘機のパイロットだったり、戦車のクルーだったり……という目立つ人たちがクローズアップされがちですが、それ以外にも自衛隊にはさまざまなお仕事があります。
「意外と知られてない?!自衛官のお仕事」では、陸上自衛隊の「普通科」「施設科」「通信科」をご紹介しましたが、今日は陸上自衛隊のその他の職種のうち、いくつかをご紹介したいと思います。
みなさんがこれから出会う自衛官がどんなお仕事をしているのか……ぜひ参考にしてください!
陸上自衛隊の職種は全部で16コ!
(陸上自衛隊HPより)
陸上自衛隊には、
普通科、機甲科、野戦特科、高射特科、情報科、航空科、施設科、通信科、武器科、需品科、輸送科、化学科、警務科、会計科、衛生科、音楽科
の、16の職種があります。では、まずはざっくりと、ぞれぞれをひとことで表してみましょう。
○普通科→自分の身ひとつ(+小さめの武器)で戦う人たち
○機甲科→戦車と偵察を担当
○野戦特科→地上に向かって大砲ドーン!
○高射特科→空に向かってミサイルドーン!
○情報科→データでバックアップする人たち
○航空科→飛行機とヘリコプター
○施設科→土建屋さん+地雷処理
○通信科→固定電話、携帯電話、ネット回線的なお仕事
○武器科→武器の整備と不発弾処理
○需品科→武器以外のモノはすべておまかせ!ごはんもお風呂も作ります
○輸送科→ヤマト運輸とか日通とか佐川急便とかの陸上自衛隊バージョン
○化学科→生物・化学兵器、放射性物質とかに対応
○警務科→陸上自衛隊のおまわりさん
○会計科→陸上自衛隊の中で動くお金の管理
○衛生科→お医者さん、薬剤師さん、看護師さん、など陸上自衛隊の医療チーム
○音楽科→陸上自衛隊のオフィシャルバンド。有事では後方支援を担当
たくさんの職種のワケは、「自己完結」
……と、こう見てみると、陸上自衛隊にはありとあらゆる専門家がいますよね。
陸上自衛隊だけでこうですから、海上自衛隊、航空自衛隊を含めると、この世のすべてを網羅しているんじゃないかと思えてきます。
自衛隊は、「自己完結型組織」といわれています。
災害でも有事でも、自分たちの生活やお仕事は自分たちですべてまかなえるようにできているからです。
衣食住はもちろん、電話やメールで連絡を取りたければその回線をつなぎ、そのための物を調達し、運び、病気やケガをすれば治療をする……自衛隊だけで、なーんでもできちゃうんですね。
個人的には、「自衛隊でまかなえないのは介護だけだな」と感じています。まあ、介護が必要な年齢だと、もう自衛隊を退職してますからね。
自衛隊は、そんな「自己完結型組織」で、そのためにいろんな職種があります。
分類は、戦闘職種と後方職種の2つ
陸上自衛隊の職種は、大きく2つに分かれます。それは、「戦闘職種」と「後方職種」。
「戦闘職種」は、「戦闘のための職種」。そして、「後方職種」は「後方支援(バックアップやサポート)のための職種」です。
戦闘職種は、普通科、特科(野戦特科、高射特科)、機甲科。のでこれらの頭文字を取って、「普特機(ふとっき)」と呼ばれています。
後方職種は、それ以外のすべてです。とはいえ、後方職種がまったく戦闘に関わらないかというと、そうではありません。戦闘地域で活動する後方職種もたくさんあります。
あくまでも「分類」として、普通科、特科(野戦特科、高射特科)、機甲科の「普特機」が「戦闘職種」とされています。
野戦と高射、ふたつの「特科」
(陸上自衛隊HPより)
では、まず「戦闘職種」から詳しく見ていきましょう。
「普特機」の、普通科、特科(野戦特科、高射特科)、機甲科です。
普通科は、「自分の身ひとつ(+小さめの武器)で戦う人たち」です。
詳しくは「意外と知られてない?!自衛官のお仕事」に書きましたので、ご参照ください。
では、次。野戦特科、高射特科です。
この野戦特科と高射特科は、「特科」とまとめて呼ぶこともあります。「特科」とは、大砲やミサイルといった大型の火砲を専門とする職種です。そして、「野戦」と「高射」ではなにが違うのかというと、「どこに向かって撃つのか」。
「野戦特科」は、地上にある敵の戦車などに向かって大砲を撃ちます。一方「高射特科」は、飛んでくる敵の戦闘機といった空にあるものに向かって撃ちます。
「特科→大型の火砲(大砲やミサイル)」で、そのうち「野戦は地上」、「高射は空」と理解してください。
ちなみに、「高射特科」は陸上自衛隊だけではなく航空自衛隊にもあります。テレビなどで、ときどき「北朝鮮から弾道ミサイルが……」というニュースが流れますが、もし弾道ミサイルが日本に飛んで来たらとても危険なので、自衛隊が弾道ミサイルを破壊するミサイルを撃つ準備をします。
この「弾道ミサイルを破壊するミサイルを撃つ」のも「高射特科」のお仕事です。
(厳密にいえば海上自衛隊も関わっているのですが、長くなるのでまたの機会に)
機甲科……まずひとつ目は陸上自衛隊の花形、戦車
(陸上自衛隊HPより)
続いて、残るひとつの戦闘職種、「普特機」の「機」、「機甲科」です。
機甲科には、大きく2つの役割があります。ひとつ目は「戦車」、そしてもうひとつは「偵察」です。
戦車は、なんとなくどんなものか想像できますよね。キャタピラで走る、大きな戦車砲を積んだあの乗り物です。
現在、陸上自衛隊には「74式戦車(ななよんしきせんしゃ)」、「90式戦車(きゅうまるしきせんしゃ)」、「10式戦車(ひとまるしきせんしゃ)」という名前の3種類の戦車があります。
「日常生活でもクセが出る?!自衛官あるある」で、自衛隊では「1」を「ひと」、「0」を「まる」と読むとお勉強しましたが、戦車の名前も「10式」は「じゅうしき」ではなく「ひとまるしき」と読みます。
この「74」「90」「10」は何なのかというと、「正式に採用された年」です。「74式戦車」は1974年に、「90式戦車」は1990年に、「10式戦車」は2010年に正式採用されたので、こんな名前が付いています。
戦車の種類にもよりますが、ひとつの戦車にはだいたい3人のクルーが乗っています。運転する人、砲を撃つ人、指示する人(リーダー)です。指示をするリーダーは「戦車長(せんしゃちょう)」と呼ばれています。
このクルーはもちろん機甲科の所属なのですが、クルーだけでなく、戦車の整備を担当する人も機甲科の部隊に所属します。
機甲科、もうひとつのお仕事は偵察
(陸上自衛隊HPより)
機甲科には、「戦車」ともうひとつ「偵察」の役割があります。
「偵察」とは、ざっくりいうと「下見」。みなさんも、大きなイベントをするときは、事前にイベント会場を下見しますよね。下見をしっかりすれば、「意外と女子トイレが少ないな」とか「このスペースはこんなことに使えるんじゃないか」といったことが分かるので、イベントが上手くいきますよね。
自衛隊も、なにかをするときは「下見」である「偵察」をします。向かう場所がどんななのか分からなければ事故につながるかもしれませんし、地形によって作戦も変わるかもしれません。また災害派遣でも、地上や空から偵察をした上で、救助や支援の方法を考えます。
機甲科の偵察部隊は、「偵察警戒車」という車や「偵察バイク」を使って、地上での偵察を担当します。
「偵察バイク」は、富士総合火力演習などでもよく登場するのでぜひチェックしてみてください。
……と、長くなりましたので今回はここまで。
今回は、陸上自衛隊の戦闘職種、普通科、野戦特科、高射特科、機甲科のご紹介でした。
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