陸上自衛隊リニューアル!~直轄部隊・ニュー部隊編
陸上総隊の「ちょっと変わった」部隊
前回の
>>陸上自衛隊リニューアル!~組織改革編
では、この春に「陸上総隊」という組織が誕生したこと、そして
小隊=クラス
中隊=学年
大隊・連隊=小学校
師団・旅団=市区町村
方面隊=都道府県
と例えて、それぞれの部隊がどのようなものかをお話しました。
陸上総隊は、これらの方面隊や師団・旅団をとりまとめている組織なのですが、実はそれ以外の「ちょっと変わった」部隊があります。それは、「陸上総隊の直轄部隊」。師団や旅団に属さず、陸上総隊が直接管轄している部隊です。
パラシュート部隊に、覆面部隊!?
師団や旅団に所属していない、ちょっと一匹オオカミ的なニオイのする「陸上総隊の直轄部隊」。どんな部隊があるのでしょうか。
イベントなどにもよく登場していて、一般的に一番有名かなーと思うのが、「第1空挺団」です。こちらは、自衛隊唯一のパラシュート部隊。パラシュートで空から降りてきて任務を遂行します。自衛官がパラシュートを使って降下するシーンは、みなさんもテレビなどで一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?
「第1」と名がついていますが、「第2」や「第3」はなく、他に同様の部隊はありません。ということで、第1空挺団は師団や旅団に属さない、「ちょっと変わった」陸上総隊の直轄部隊です。
そして、「ちょっと」どころではなくとっても変わった部隊……と個人的に思っているのが、「特殊作戦群」。こちらはテロなどに対応するための特別な部隊なのですが、装備や隊員がすべて秘匿とされているとってもナゾな部隊です。あまりにもナゾなため、私もよく知りません(笑) 所属隊員も素性を知られてはならないため、式典などに出席する特殊作戦群の隊員は覆面を付けて顔が分からないようにしています。
師団・旅団の部隊と似てるけどちょっと変わってる部隊
師団や旅団には「普通科連隊」という部隊がありますが、同じような部隊が陸上総隊の直轄部隊にもあります。名前は「中央即応連隊」といいます。
師団や旅団の普通科連隊と、隊員も装備品も似ているのですが、「ちょっと変わった」の部分は、その任務。中央即応連隊という部隊名に「即応」がついているように、海外派遣や国内での不測事態などに即応するための部隊です。
師団や旅団の普通科連隊は、師団ごと、旅団ごとに作戦の一部として活動するのですが、中央即応連隊は単体でも動きます。まさに「一匹オオカミ」という感じですよね。
そして、師団や旅団には「飛行隊」がありますが、陸上総隊の直轄部隊には「第1ヘリコプター団」という部隊があります。第1空挺団や特殊作戦群と連携するヘリコプターの部隊で、皇族や総理大臣、国賓の方々が乗る専用のヘリコプターもあります。また、「第1ヘリコプター団」という名前ですが、「LR-2」という名前の飛行機も。第1ヘリコプター団も中央即応連隊と同じく、国内や海外での任務での活動実績がたくさんあります。
特殊武器に対応、そして国際活動も
陸上総隊の直轄部隊には、その他にこんな部隊があります。
・システム通信団
通信や、活動記録のための写真、映像を担当
・中央情報隊
活動のための情報収集を担当
・中央特殊武器防護隊
生物化学放射線といった特殊な武器で攻撃を受けたときに対応
・特殊武器衛生隊
生物化学放射線といった特殊な武器で攻撃を受けたときの、医療面を担当
・国際活動教育隊
海外派遣に参加する隊員を教育する部隊
新しい日本の守り方、水陸機動団!
そしてもうひとつ、この春の陸上総隊誕生と同時に、新しくできた直轄部隊があります。それは「水陸機動団」です。
水陸機動団は、その名のとおり「水・陸」で活動する部隊。日本のうち、陸を守るのが陸上自衛隊、海を守るのが海上自衛隊、空を守るのが航空自衛隊と役割を分けていたのですが、「海と陸の瀬戸際」を守るための部隊として新たに作られました。
日本は海に囲まれた島国で、たくさんの小さな島もあります。もしそういった島が侵略をされたときに取り戻すという任務を持っているのが、水陸機動団です。
水陸両用での活動ができるため、災害派遣でもこれまで以上に素早い救助活動ができるようになるんじゃないかなーと期待しています。
そして、ちょっと変わった車も誕生!
と、今回は陸上総隊の直轄部隊をご紹介しました。この春、陸上総隊ができたことで、こういった部隊がより円滑に活動できるようになり、日本がより守られるようになりました。イベントなどで、もっと深くこれらの部隊を知ってもらえれば、みなさんもこれまで以上に安心して暮らせるのではと思います。
そしておまけにもうひとつ「この春リニューアル」な話題を。
すでにイベントなどでご覧になった方も多いのではと思いますが、陸上自衛隊にこれまでになかった車ができました。「機動戦闘車」という名前で、装甲車に戦車砲を積んでいます。「戦車のキャタピラがタイヤになっている車」というと分かりやすいでしょうか。
機動戦闘車は、英語のmobile combat vehicleの頭文字を取って、隊員さんたちからは「MCV」と呼ばれています。
「機動師団・旅団」も増えていきます
前回、「師団・旅団とはどういうものか」をお話しましたが、全国に15ある師団・旅団のうち、8つの師団・旅団にこの機動戦闘車が配備され、「機動師団・機動旅団」となります。
師団・旅団には通常、戦車大隊があるのですが、機動師団・機動旅団ではその代わりに機動戦闘車を持つ「即応機動連隊」が置かれます。
……と少し難しいお話になってしまいましたが、もちろんすべてを覚える必要はありません。「この春、陸上自衛隊はこんな感じでちょっと新しくなったんだな」ということだけでも頭に入れておけば、今後イベントに行ったとき、そしてこれらの部隊に関係する隊員さんと出会ったときに、理解しやすくなると思います。ぜひ参考にしてくださいね!
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