陸上自衛隊リニューアル!~組織改革編
「陸上総隊」誕生!
この春、新しくなった陸上自衛隊。前回は、新制服のお話でした。
では、今回は「組織改革」のお話……というと難しく聞こえるかもしれませんが、できるだけ分かりやすくお伝えしようと思いますのでぜひお付き合いください。
3月27日、陸上自衛隊にある組織が誕生しました。その名前は「陸上総隊」。これはどういうものかというと、ざっくりいえば「陸上自衛隊の全体をまとめる組織」です。これまで、陸上自衛隊にはこういった組織がなく、各方面隊(後ほど説明します)などがそれぞれの部隊の運用をしていました。
ですが、陸上自衛隊全体の運用を一元的に行えるよう、そして海上自衛隊・航空自衛隊とも、より連携がとれるように、この「陸上総隊」ができました。
小隊・中隊・大隊・連隊とは?
……と、陸上総隊がどういうものかをざっくり理解したところで、まずは用語の解説から。先ほど「方面隊」という言葉が出てきましたが、こういった部隊を表す言葉は普段聞き慣れないので難しく感じてしまいがちです。が、こちらもなんとなくイメージできれば理解しやすくなりますので、気軽にお勉強してみてください。
陸上自衛隊のイベントなどに行くと、「小隊」「中隊」「大隊」「連隊」という言葉を耳にすることがあるでしょう。おそらく、「それってなんなの?」と思いながら聞き流していた方が多いのではと思いますが(私も最初はそうでした)、これは小学校に例えるとイメージしやすいです。
「大隊」「連隊」を小学校とすると、「中隊」は学年、そして「小隊」がクラス……という感じです。
例えば、東京都の練馬駐屯地にある「第1普通科連隊」。この第1普通科連隊には
・第1中隊
・第2中隊
・第3中隊
・第4中隊
・第5中隊
・本部管理中隊
・重迫撃砲中隊
という名前の中隊があります。「第1普通科連隊」という名前の小学校の、1年生、2年生、3年生……のようなものです。
そして、それぞれの中隊に「第1小隊」「第2小隊」や「衛生小隊」「通信小隊」といった小隊があります。これが、クラス。1年生の中に、1組、2組、3組……があるのと同じです。
なんとなくイメージできたでしょうか?
大隊・連隊の集合体、「師団」「旅団」
小隊が集まってできた中隊、そして中隊が集まってできた大隊・連隊。この大隊・連隊を「小学校」と例えたまま続けます。
小学校は、市区町村に属していますよね。○○市立○○小学校、○○町立○○小学校というように。同じように、大隊・連隊は「師団」「旅団」に属しています。
例えば、先ほどの「第1普通科連隊」は「第1師団」の部隊です。○○市には○○小学校だけでなく、△△小学校や□□小学校などいくつかの小学校がありますが、同じように第1師団には
・第1普通科連隊
・第32普通科連隊
・第34普通科連隊
・第1後方支援連隊
・第1戦車大隊
・第1高射特科大隊
・第1施設大隊
・第1通信大隊
といった大隊・連隊があります。他にも、
・第1特科隊
・第1偵察隊
・第1飛行隊
・第1特殊武器防護隊
・第1師団司令部付隊
・第1音楽隊
といった「大隊」「連隊」という名前が付かない部隊も。第1師団は、この14の大隊・連隊などの部隊でできています。
専門部隊を網羅した師団・旅団
……と、ここで鋭い方はピンとくるかもしれません。以前、陸上自衛隊の16の職種を紹介しましたが(2017年1月~3月に更新したコラムをご覧ください)、師団にはいろんな職種を担当する部隊が集まっているんです。
陸上自衛隊は、師団をひとつのグループとして戦闘などの任務を行います。ですので、それぞれの職種を専門とする大隊・連隊などから師団が編成されています。
ちなみに、「旅団」は「師団」を少し小ぶりにしたもの。師団には6000~9000人の隊員がいますが、旅団は3000~4000人です。
小隊=クラス、中隊=学年、大隊・連隊=小学校、師団・旅団=市区町村、と考えると、師団は「市」で旅団は「町」と理解すればイメージしやすいかもしれません。
日本を5つに区分した「方面隊」
そして、最初に出てきた「方面隊」。これは「師団・旅団=市区町村」としたときの「都道府県」のようなものです。都道府県は全部で47コありますが、方面隊は5つ。日本列島を5つに分け、
・北部方面隊(北海道)
・東北方面隊(東北)
・東部方面隊(関東~新潟県・長野県・静岡県まで)
・中部方面隊(富山県・岐阜県・愛知県~近畿・中国・四国)
・西部方面隊(九州・沖縄)
という名前の方面隊があります。
ちなみに、例に挙げた第1師団は東部方面隊の所属です。
陸上総隊が方面隊や師団・旅団の運用をひとつに
方面隊-師団・旅団-大隊・連隊-中隊-小隊……という部隊の編制。イメージはつかめたでしょうか?
これまでは、各方面隊がそれぞれに師団・旅団を運用していました。しかし、それらを一元的に運用できるようにしよう……と作られたのが、この春に誕生した「陸上総隊」というワケなんです。
そして、さらに陸上総隊には、どの方面隊にも師団・旅団にも属さないちょっと変わった部隊もいくつかあるのですが……こちらはまた次回。
ちなみに、先ほど「日本列島を5つに分けた方面隊がある」というお話をしましたが、同じように師団・旅団も防衛や災害対処の担当地域があります。みなさんの住んでいるところをどの方面隊、どの師団・旅団が守っているのか、ぜひ一度チェックしてみてください!
引用:陸上自衛隊HP
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