独特な色の目を持つ?!「レンジャー」な隊員たち
自衛隊には黒目が薄い人たちがいる?!
優しい顔をした人、ちょっと怖い顔の人、背の高い人、ムキムキマッチョな人……ひとことに「自衛官」といっても、いろんな人がいます。
そして、自衛隊にはちょっと変わった目の色をしている人たちがいます。
一般的に、日本人は黒い目です。しかし、よーく見るとその黒目が少し薄い色の人たちがいるんです。
今回は、そんな「黒目が少し薄い人」のお話です。
ちょっと独特な、「レンジャー」という資格
(陸上自衛隊公式HPより)
私は以前、陸上自衛隊の「空挺レンジャー」訓練の密着取材をさせて頂いたことがあります。
当時、友人に「空挺レンジャーの取材に行く」と話したんですが、彼女からは「なにそれ?ヒーロー戦隊?」と言われてしまいました。どうやらゴレンジャーやガオレンジャーのようなものだと思ったようです。でも、自衛隊になじみのない人だとそう思うのも仕方ないですよね。
「レンジャー」。この言葉は「レンジャー隊員」、「レンジャー部隊」という使い方で聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
「レンジャー部隊」という言葉はメディアでもよく使われがちなのですが、でも「レンジャー部隊」というものは自衛隊には存在しません。正確には、「レンジャー」は「資格」のようなものです。そしてこの「レンジャー」の人が、ちょっと独特な目をしています。
自衛隊では、資格のことを「モス」という!
運転免許や医師免許、調理師免許など、私たちの身の回りにはさまざまな資格があります。同じように、自衛隊にも自衛隊独自の資格があり、この資格は「MOS(モス)」と呼ばれています。
戦車を操縦するためのMOS、気象を観測するためのMOS、戦闘機に乗るためのMOSなど、自衛隊にはたくさんのMOSがあります。「レンジャー」もそれらのMOSのひとつです。
レンジャーのMOSを取得するためには、「レンジャー課程」という訓練を修了しなければなりません。そしてレンジャー課程の訓練を受ける前にも、特別な試験に合格しなければなりません。まず試験に合格し、厳しい訓練を受け、それらすべてをやり遂げた隊員だけが「レンジャー」を名乗ることができます。レンジャーのMOSを取得した人は、左胸に「レンジャー徽章」という、ダイヤモンドと月桂冠がデザインされたバッヂを付けています。
食事、睡眠を極限まで削り行われる訓練
(陸上自衛隊公式HPより)
レンジャー課程では、ロープを使って崖や谷を渡ったり、水上から陸上へ潜入したり、さらには襲撃や伏撃、そしてそれら任務を行うためのサバイバル技術の習得などの訓練が行われます。
訓練は大きく分けて2つ。まず、駐屯地の中で体力を上げるためのトレーニングを繰り返し行い、また基礎的なロープの操作方法などを訓練します。
そして後半は、山に入ります。「遭難した人を探し、救助する」、「〇〇地点で敵を襲撃する」といった任務が与えられ、道なき道を進み、崖や谷、水路を超え、任務を遂行します。
その行動はとても過酷なものです。体力的にも精神的にも限界を超えてしまい、訓練を続けられなくなる人が続出します。
自らギブアップを申し出る人、ケガでドクターストップがかかる人……たくさんの人が訓練から脱落し、山を下りて行きます。
訓練では、食事や睡眠が極限まで削られる場面もあります。睡眠時間や食料が限られた中でも、任務が遂行できるようにするためです。
空腹に耐えかね、食料を懇願
「なんか食い物持ってないですか?」
取材中、私は何度もこの言葉を掛けられました。空腹に耐えかね、教官の目を盗んで取材中の私に食料を懇願する隊員が何人もいました。
もちろん、私のような取材者が訓練中の隊員に食べ物などをあげることは厳禁です。もしあげてしまうと、訓練になりませんから。
それは、隊員もよく知っています。しかし、それでも懇願せざるを得ないほど彼らは飢えていました。
「ごめんなさい、食べ物は持ってないんです」
そう断っても、彼らは諦めません。
「もう、腹が減って死にそうなんです。お願いです。なにか食べ物ください」
疲れ切った虚ろな目で、必死に頭を下げる隊員。彼の表情を見ているだけで、涙が出そうになります。できることなら、なにか少しでもあげたいのですが、取材班の食事は別の場所に保管されていて、あげられるものはなにもありません。
「ごめんなさい、本当にないんです」
取材用のノートやペンしか入っていないリュックの中身を見せると、彼はうつむき、肩を落としました。悪いことはなにもしていないのに、大きな大きな罪悪感が残りました。
与えられるのは、バッヂひとつだけ
(陸上自衛隊公式HPより)
レンジャーのMOSを持っている隊員は、何食わぬ顔で左胸にレンジャー徽章を付けていますが、みなさんこんな困難を乗り越えています。
こんな厳しい訓練をやり遂げても、彼らに与えられるのはレンジャー徽章だけです。
お給料が上がるわけでも、休日が増えるわけでもありません。
しかし、全国各地でこの名誉ある「レンジャー」になるために、たくさんの若者が志願をし、新たなレンジャーが誕生しています。
レンジャーMOSを持つ隊員は、陸上自衛隊の普通科部隊を中心として、陸上自衛隊の他部隊、そして海上自衛隊、航空自衛隊にも存在しています。
レンジャー課程訓練で得た知識や技能を活かし、国防のための任務や人命救助に励んでいます。
そして、目の色が変わっていく
(陸上自衛隊公式HPより)
空腹と睡魔に必死に耐え、いよいよ迎えた訓練最終日。すべての任務を終えた彼らは、ヘリコプターにピックアップしてもらうため、ある地点に集合していました。
みんな頬が痩せこけ、眼窩はくぼみ、顔も手も傷やアザだらけです。
痛々しい彼ら一人ひとりの顔を見ていると、あることに気が付きました。
それは、黒目の色。
みんな、黒目が紅茶飴のように薄い色になっていたんです。
「なぜ彼らは一様にあんな目の色になっているのか」
後で教官に聞くと、「極度の栄養失調だから」とのことでした。
栄養失調になるほど食料が制限された中、厳しい戦いを終えた彼ら。
山を下りると、彼らはボロボロになったその手でレンジャー徽章を受け取りました。
完全には戻りづらい、目の色
訓練を終えれば、もちろん好きなだけごはんを食べることができるので、栄養状態も良くなります。そして、薄い目の色も徐々に黒くなっていきます。
しかし、やはり完全には戻りません。
レンジャー徽章を付けている隊員は、どこか少し色素の薄い黒目をしています。
とはいえ、目の色には個人差があります。
ほぼ完全に近いくらいの黒目に戻る人、茶色いままの人、それぞれです。
また、特別に体が強く、栄養失調になりにくい人もいます。そういうタイプの人は、レンジャー課程訓練の最終日でも真っ黒な目をしていたりします。私が取材した訓練でも、一人だけ最後まで真っ黒な目のままで任務を終えた隊員がいました。
家族が出迎える、レンジャーの帰還
(陸上自衛隊公式HPより)
もし今後、ダイヤモンドと月桂冠のレンジャー徽章を付けている人を見つけたら、目の色をじーっと見つめてみてください。
真正面から、横から……太陽の光を受ける彼らの目を、じーっと見つめてみてください。
私たちの目とは少し違う、独特な印象を受けると思います。
また、お付き合いしている彼や、結婚後に夫がレンジャーを志願し、訓練を受けることもあるかもしれません。
訓練最終日にはぜひ、彼や夫を出迎えに行ってください。
山から帰ってくる隊員たちは、部隊の仲間だけでなくたくさんの家族に出迎えられます。
痩せこけた彼や夫の姿に驚くかもしれませんが、ぜひあなたの大切な人をねぎらい、称えてあげてください!
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