「なにか」が起こったときの自衛隊の活動~【その1】災害派遣
「なにか」が起こったときの出動や派遣
前回まで「自衛隊が普段している活動」についてお勉強してきました。
では、今回からは「普段」ではないとき、「なにか」が起こったときの自衛隊の活動についてお話したいと思います。
「なにか」が起こったときの自衛隊の活動には、ざっとこんなものがあります。
○防衛出動:日本が武力攻撃を受けたときなどに、日本を守る
○国民保護等派遣:日本が武力攻撃を受けたときなどに、国民を保護する
○治安出動:警察の力では治安の維持ができないときに、治安を守る
○災害派遣:災害が起こったときに、救難、救助、支援をする
これ以外にも、「対領空侵犯措置(スクランブル発進)」や「海上警備行動」、「機雷等の除去」、「破壊措置(弾道ミサイルへの対処など)」、「在外邦人の保護・輸送」、「国際平和協力活動(海賊対処などの海外派遣)」といった活動があります。
耳慣れない言葉がたくさんあって難しく感じてしまいますよね。では、ひとつずつ詳しく見て行きましょう。
自衛隊が災害派遣をするのはどんなとき?
上記の活動の中で、おそらく最も耳にするのは「災害派遣」だと思います。テレビや新聞、ネットなどでも、災害派遣活動はたびたび紹介されていますよね。
日本では、小規模から大規模なものまで、たくさんの災害が発生しています。しかし、自衛隊はすべての災害で災害派遣活動をするわけではありません。では、どういうときに災害派遣を行うかというと、
・公共性(公共の秩序を維持するため、人命や財産を社会的に保護しなければならない必要性があること)
・緊急性(差し迫った必要性があること)
・非代替性(自衛隊の部隊が派遣される以外に他の適切な手段がないこと)
の3つが基準となっています。
また、自衛隊が災害派遣を行う場合には、「自衛隊に災害派遣に来て欲しい」という都道府県知事からの要請が必要です(海上保安庁長官、管区海上保安本部長、空港事務所長も要請をすることができます)。
ですので、基本的には自衛隊が災害派遣を行うのは、公共性、緊急性、非代替性の基準に沿っていて、要請があった場合のみ、となります。
要請がなくても、災害派遣を行う場合も
しかし、この「要請」に関しては一部例外があります。
大きな災害が起きてしまい、都道府県知事などと連絡も取れなくなってしまった……といった場合には、要請を待たずに災害派遣が行われることもあります。これは「自主派遣」と呼ばれています。
また、大きな被害が予想されるような災害が発生した場合には、「どんな被害が出ているのか」を見回り、情報収集するため、要請を待たずに災害が発生したらすぐに航空機が向かうこともあります。
また、要請がなく行われる災害派遣には「近傍派遣」というものもあります。これは駐屯地や基地などの近くで発生した災害に対応するものです。駐屯地や基地には消防車や消防のための隊員がいるので、近所で火災が起きたときにこの「近傍派遣」で消火活動を行うこともあります。
1995年に起きた阪神・淡路大震災では、発生から都道府県知事からの要請まで時間がかかったため、兵庫県伊丹市にある伊丹駐屯地の部隊が、要請される前に近くの阪急伊丹駅で「近傍派遣」として救助活動などを行ったという例もありました。
地震や風水害だけでなく、原子力災害のための派遣も
そして災害派遣には、「自主派遣」、「近傍派遣」のほかに「原子力災害派遣」というものもあります。
東日本大震災では福島第一原発事故の対応にも自衛隊が派遣されましたが、これは「原子力災害派遣」として行われました。当時は、通常の「災害派遣」と「原子力災害派遣」の二つを同時に実施していたということになります。
前回の
>>今さら聞けない素朴なギモン~自衛隊って普段はなにをしているの?【4】
では、災害派遣には
・地震や風水害などの自然災害
・捜索、救助活動
・消火支援
・急患輸送
といった種類があるとお勉強しました。これらの災害派遣活動は、基本的にすべて上記のような手順で行われているわけです。
災害派遣が決定する前でも、多くの隊員が職場へ
大きな災害が起きると、要請のあるなしに関わらず、災害派遣となった場合にすぐに出動できるよう、該当する隊員は夜や休日でもすぐに呼び集められます。災害はいつ起こるか分かりませんので、自衛官の彼と約束をしている日でも、子供の行事があっても、呼ばれればどんな大事な予定でもすべてキャンセルして駐屯地や基地に戻らなければなりません。
また、場合によっては彼女や妻、子供、家族が被災することもあるかもしれません。それでも、自衛官の彼や夫はすぐに職場へ駆け付けます。被災して彼や夫にそばに居て欲しいときに、自分の元からいなくなってしまうんです。
ですので、自衛官と結婚している方はみなさん多かれ少なかれの覚悟を持たれていることが多いです。夫を頼らず、どう避難すればいいのか、家族をどう守るのかを、普段から夫と話し合っているという人も。
一番頼りにしたいときに、彼や夫がいなくなってしまうのは、本当に大変です。しかし、彼や夫は災害時の訓練を日ごろから行っていますし、そのための知識もあります。
いざというときにいなくなってしまう彼や夫ですが、知識や経験はとても頼りになります。万が一に備えて、「どんなときはどうすればいいのか」を教えてもらって、自分の身や家族を守れるようになっておくと、災害派遣に向かう彼や夫も少し安心してお仕事に専念できるかもしれませんね。
災害に備え、普段から「当直」や「待機」が
そして、「災害のためのお仕事」は「災害が起こったとき」だけではありません。
いつ起こるか分からない災害に備えて、自衛官には「当直」や「待機」といった交代制のお仕事もあります。当直や待機についている間は駐屯地・基地の外には出られないので、やはり彼女や家族には「困るなあ」ということもあるかもしれません。
当直や待機のお仕事は、
>>長期出張だらけの自衛官。寂しい?それとも……?
でご紹介しましたので、こちらもぜひご覧ください。
災害派遣は基本的に「要請」があって行われるので、災害のすべてで災害派遣をするわけではないのですが、大きな災害が起こればその可能性は高くなります。
ですので、自衛官はテレビのニュース速報に敏感な人が多いです。あの独特な音がテレビから流れると、どんなにくつろいでいても「ハッ」となり、中には寝ていても飛び起きてしまうという人もいます。
今回は「災害派遣がどのように行われるのか」というお話でした。
ぜひ少しでも頭に入れておいて、彼や夫の生活に役立ててくださいね。
画像引用:陸上自衛隊HP/海上自衛隊HP/航空自衛隊HP
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