長期出張だらけの自衛官。寂しい?それとも……?
突然の大災害が発生。
妻の妊娠中に夫は被災地へ
2011年に発生した、東日本大震災。当時、最大で10万人の自衛官が被災地に向かいました。被災地に行かなかった自衛官も、通常より少ない人数でも国防業務が滞らないよう、多忙な日々を送っていました。長期間、家に帰れない自衛官がたくさんいました。
自衛官を夫に持つある友人は、当時妊娠中でした。奥さんが妊娠中だからと言って、災害派遣が免除されることなんてありません。自分の体調もすぐれない中、夫は被災地へ……無事だろうか、放射能の影響はないだろうか……当時、友人からは不安な思いをつづったメールがよく来ていました。大きなお腹を抱えながらら、ひとりで不安と孤独に耐えていました。
しかし数日後、友人からこんなメールが来ました。
「不安はいっぱいあるし、これからも消せることはないと思う。でも私がしっかりしなきゃだめだよね。私がしっかりしていないと、旦那は安心して仕事ができないよね。ひとりでがんばるよ!元気な赤ちゃんを産むことだけ考えて、毎日がんばる!」
災害時以外でも、家を空ける
「当直」。そして「待機」
災害派遣で自衛官が出動する姿……というのは、みなさんもテレビなどで一度は見たことがあるかと思います。
大きな災害が起こると、みんなとっても不安になります。愛する人にそばに居て欲しい気持ちがより強くなります。しかし、そんなときに自衛官の夫はいなくなってしまいます。
自衛官が長期で家を開けるのは、災害時だけではありません。自衛官は頻繁に家からいなくなります。
例えば、「当直」。災害などは、いつ起こるか分かりません。ので、自衛隊の各部隊には、毎晩一定数の「当直」の人が残ります。当直の人は、何かあったときの連絡などを担当します。もちろん、当直のときは家には帰れません。
そして、「待機」。災害などが起こったときは、夜間でも休日でも、該当する自衛官に「今すぐ駐屯地・基地に戻ってください」と「呼集」が掛かります。すぐに該当者全員が集まるのですが、しかし人命が掛かっているため集まるまでの時間も無駄にはできません。なので、「当直」以外にも「待機」という人が一定数、駐屯地・基地に残っていて、呼集した隊員が集まるまでに出動の準備を整えます。この「待機」には通常、家庭を持つ人ではなく、駐屯地・基地内に住んでいる独身者が就きます。ので、自衛官の彼氏に「今度の3連休、旅行に行こうよ」と誘っても「待機だから無理なんだ」と返ってくることがあります。
「演習」の長期出張。
なにも告げずに行ってしまうことも
自衛官が家からいなくなることは、まだまだあります。最も頻繁にある「長期出張」は、「演習」。
自衛隊には「演習」という訓練があります。日本が武力攻撃を受けるようなことがあったら、自衛隊はそれを防ぐ活動をします。確実に防げないと、多くの人命に関わるので、厳しい訓練を繰り返します。
陸上自衛隊の場合、数週間山にこもって「仮想の戦闘」をする訓練もあります。この数週間は携帯もつながらず、お風呂にも入れないこともあります。睡眠も十分ではない場合もあります。演習が終わり、夫が数週間ぶりに家に帰って来たと思ったら、ゆっくり話す間もなくバタンキューです。
海上自衛隊の場合は、訓練で長期の「出港」があります。こちらは海に出るのでやはり携帯もつながらないことが多いです。そして、乗っている船によっては、その船の行動が機密の扱いになることもあり、その場合は「いつ出港するのか、入港するのか」は妻にも言ってはいけません。「旦那が朝、出勤したらそのまま帰ってこない……ああ、出港したのか。今度はいつ帰るんだろう。来週かなぁ、再来週かなぁ、もっと先かなぁ」なんてことになります。
何度も何度もやってくる
「入校」での教育・訓練
そして一番長期間の出張といえば、「海外派遣」。こちらの場合は、「なにも言わずに急に行ってしまう」ことはまずありませんが、数カ月間、日本からいなくなります。通信環境の良くない国の場合では、電話で声が聞けるのも月に1回程度、ということもあります。
また、自衛官には「入校」がつきものです。これは「学校や教育隊に入って、教育と訓練を受ける」というものです。自衛隊にはたくさんの学校や教育隊があり、入隊したら半年~1年間、階級が「士」から「曹」に上がるときは半年間、「曹」になってからも定期的に数カ月間、幹部になるときに数カ月間、中隊長になるために数カ月間……などなど、自衛官は何度も何度も入校し、教育・訓練を受けます。階級や役職によるものだけでなく、人によっては「英語を勉強するため」「情報処理を勉強するため」といった入校もあります。
入校中は数日間の休暇で1~2度帰宅できますが、それ以外は家を空けっぱなしです。
妊娠中に夫から告げられた
「俺、もうすぐ入校するから」
……と、「自衛官の夫が家からいなくなるとき」をいくつか挙げてみました。
みなさん、いかがでしょうか?「夫がこんなに頻繁に、長期で家からいなくなる」と聞くと、「寂しい」「悲しい」「嫌だ」「困る」という方もいらっしゃると思います。
先ほど、妊娠中に夫が災害派遣へ……という友人の話をしましたが、ちょうど今、別の友人「Mちゃん」が同じような状況です。Mちゃんの場合、妊娠中にご主人から「もうすぐ俺、入校するから」と言われました。
Mちゃんのご主人は「士長」の階級でずっとがんばっていたんですが、めでたく「3曹」になる試験に合格。しかし「3曹」になるには、試験に合格しただけではダメで、半年間の訓練を受けなければなりません。「士長」は、先輩や上司から言われた仕事をちゃんとする……という役割なんですが、「3曹」になると、後輩や部下に「指導」をする立場になります。ので、そのための教育を半年間受けるんです。
しかし、Mちゃんは妊娠中。飛行機に乗れば実家にも帰れますが、ちょうど兄弟の出産と時期が重なってしまい、実家のお世話になることは難しくなってしまいました。「だから、実家には帰らず、旦那と2人でがんばる」と言っていたんですが……こんなときに限って、ご主人が入校。「ひとりで出産して育児なんて無理だ……どうしよう……」とMちゃんは頭を抱えてしまいました。
そしてMちゃんは元気な男の子を産みました。運よく、ご主人は赤ちゃんが産まれた後に入校となり、出産にも立ち会えて赤ちゃんを抱っこすることができました。しかし、すぐにご主人は入校してしまい、Mちゃんひとりでの育児が始まりました。
助けのない孤独な育児。
寝不足で赤ちゃんと向き合っていると……
私も友人として心配なので、ちょくちょくMちゃんと赤ちゃんの顔を見に行っています。Mちゃんは、いつも寝不足で大変そうです。そして家に話し相手もおらず、唯一の存在が泣いてばかりの赤ちゃんなので「話相手が欲しい。時間があったらいつでも来て!」と悲痛な愚痴も漏らします。でも、二度三度と行くうちに……。ある日、Mちゃんからこんな言葉が出ました。
「これはこれで楽かも!旦那の助けがないのは辛いけど、でも旦那の帰宅時間に合わせてごはん作らなくていいから楽だよ(笑)旦那がいなけりゃいないでなんとかなるもんだね」
Mちゃんは、立派な「ママ」の顔になっていました。
夫がいないことで生まれる
「楽しさ」や「愛」
夫の長期出張。「寂しい」「悲しい」「嫌だ」「困る」……そんな感情が沸くのは当然です。でも、考え方によっては「楽!」でもあるようです。
「旦那のごはんのこと気にしなくていいもんね!」
「洗濯物が少なくて助かるわ!」
「時間ができたからジョギング始めたの!もう3キロ痩せたのよ!」
自衛官の奥さんたちは、口々にこう言います。
そして、周りの独身自衛官からも、「俺がいなくても不安にならない女性と結婚したい」とよく聞きます。
「旦那さんと毎日一緒じゃないと嫌だという人だったら、俺じゃ叶えられないから」
「自分で楽しみを見つけてくれるといいな」
と。もちろん、「俺がいない間は毎日寂しがってて欲しい!」という人もいるかもしれませんが……程度は人それぞれですね。
そして、私が一番印象的なのは、自衛官からも、奥さんからもよく聞くこの言葉です。
「長い間会わずにいると、会った時がとても新鮮なんだよ。久々に顔を見るから、愛が復活するんだよ(笑)毎日顔を合わせてたらこうはいかないよね」
ちょっと特殊な自衛官というお仕事。夫にそばに居てもらえないから奥さんたちはとっても大変です。でもみなさん、その大変さをプラスに変えて、仲良く楽しく過ごしていらっしゃるようです。
画像出典:陸上自衛隊HP > フォトギャラリーより引用
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