女子にも分かる自衛隊

今さら聞けない素朴なギモン~自衛隊って普段はなにをしているの?【4】


【業務例1】「対領空侵犯措置」のための業務

自衛隊は、災害時ではないときはなにをしているのか?
これまで、自衛隊が普段している活動のうち
①国防の活動
②国防や災害時の活動ための訓練
をお勉強しました。今回は、
③活動や訓練のための業務
のお話です。

①②の活動や訓練を行うには、さまざまな「業務」が必要となります。例えば、
>>今さら聞けない素朴なギモン~自衛隊って普段はなにをしているの?【1】
で紹介した、「対領空侵犯措置」(スクランブル発進)。

戦闘機が飛ぶためには、まず機体が安全な状態でなければなりません。安全に飛行できるよう、戦闘機を整備するという業務が必要です。
戦闘機が飛ぶためには燃料も欠かせません。燃料を入れるための業務も必要です。
そして、これら整備のための部品や工具、燃料は輸送して来なければなりませんし、「どんな部品が必要なのか」「燃料はいつまでにどのくらい必要なのか」といった調達の業務も関わってきます。
航空機が飛ぶためには、「管制(空の交通整理)」の業務も行わなければならず、さらに対領空侵犯措置では通常の「航空管制(空の交通整理)」だけでなく、「要撃管制」という戦闘機の行動を統制する特別な管制業務も行われています。
また、滑走路も安全に飛行できるよう常に整備された状態でなければならず、そのための業務も必要ですし、離着陸時に戦闘機にトラブルが起きた場合にオーバーラン(滑走路を外れること)しないための措置をする業務、また事故が起きてしまった場合に備えた消防の業務もあります。

……と、対領空侵犯措置に関係する業務を一部挙げてみました。「戦闘機が飛んで行って、領空侵犯しようとする怪しい航空機を監視する」というお仕事を思い浮かべると、「パイロットががんばっているんだな」という想像はつきやすいですが、実はその裏にこんなにたくさんの「業務」があるんです。

【業務例2】演習のための業務

>>今さら聞けない素朴なギモン~自衛隊って普段はなにをしているの?【3】
では、「演習」という訓練をご紹介しました。この「演習」にも、「実際に訓練をする人」だけでなく、たくさんの業務が関わります。

演習では実弾や空包を使いますが、これも戦闘機の燃料のように調達、輸送といった業務が必要です。そして弾だけでなく、銃や車両といった装備品も同様。
演習の前には「どんな想定で演習を行うのか」といった計画を立てますし、演習が終われば「どんな問題点があったか」といった反省会をしてその後の訓練や「万が一」のときの糧とします。これも、演習に関わる業務です。

余談ですが、「演習」は「戦闘行動をとる人たち」だけでなく、通信や施設、輸送、需品、衛生……といった、これまでにご紹介してきたそれぞれの職種・部隊も「万が一のときに備えた訓練」をします。
ですので、これらの部隊でも、演習のためにまつわる業務がたくさんあるんです。

活動をするための最重要業務、「人材育成」

……と、「活動や訓練のための業務」をいくつか挙げましたが、これらの業務の中でも「最も」といっても過言ではない大切なものがあります。それは、「人材の育成」です。

戦闘機のパイロット、整備員。艦艇の武器を担当する隊員や、航海を担当する隊員。戦車の乗員、砲の射撃をする隊員、そして通信や施設などのスペシャリストの隊員……。
これらの人はすべて、自衛隊で育成されます。「万が一」のときにちゃんと活動できるよう、自衛隊ではそれぞれの隊員に合わせて、段階的なたくさんの「教育」が行われているんです。

「教育を行うための学校」があること、そしてその学校に「入校」することは、これまでもこのコラムで何度かご紹介しましたが、これらの人材育成のための「教育」も、大切な「自衛隊が普段している活動」です。

そもそも、「災害派遣」も自衛隊の「普段の活動」です

「自衛隊って災害派遣じゃないときは、普段なにをしているの?」
テレビや新聞などのメディアに登場する「自衛隊の活動」は、地震や水害、救助などの「災害派遣」がほとんどなので、持ってしまいがちなこの疑問。

ということで、これまで「自衛隊が普段している活動」
①国防の活動
②国防や災害時の活動ための訓練
③活動や訓練のための業務
をご紹介してきました……が。ぜひみなさんに頭の片隅にでも置いていて頂きたいことがあります。それは、「災害派遣じゃないときは、普段なにをしているの?」の、「災害派遣」について。

「災害派遣じゃないときは、普段なにをしているの?」
と思われがちなんですが、しかし
「災害派遣も、実は〝自衛隊が普段している活動〟」
なんです。

自衛隊が行う一年間の災害派遣は何件?

では、ここで突然クイズです。
【平成27年度の一年間で、自衛隊が行った災害派遣は何件でしょう?】

平成27年度には、9月に「関東・東北豪雨災害」が発生し、自衛隊の災害派遣が大きく報道されました。
また、26年度に起きた御嶽山噴火での行方不明者の捜索を、27年7~8月にも「災害派遣」として行っています。
では、答えです。正解は「541件」。
単純計算で、一日に約1.5件の災害派遣を行っていることになります。

地震や風水害以外にも、こんな災害派遣が

この「541件」という数字、「え?!そんなにたくさん?!」と驚かれた方も多いのではないでしょうか。
テレビや新聞で大きく報道されるのは、「比較的大規模な災害」で行われる災害派遣だけなのですが、実は自衛隊は普段からたくさんの災害派遣を行っているんです。

よく報道に上がるのは、地震や風水害などによる災害派遣で、平成27年度では「関東・東北豪雨災害」を含む13件がそれに該当します。
そして、火山噴火や海上で遭難した人などの「捜索・救助」が22件。
また、自衛隊は「消火支援」も「災害派遣」として行っていて、これが61件です。テレビで「自衛隊のヘリコプターが山火事の現場に大量の水を投下」というシーンが放送されることがありますが、これも「消火支援」のひとつです。
さらに、大雪で断水した地域で給水支援を行ったり、鳥インフルエンザや口蹄疫の発生で自衛隊が支援活動をすることがありますが、これは「その他の災害派遣」という分類で、平成27年度は26件ありました。

災害派遣のうち、最も多いのは「急患輸送」

では、残りの419件。これは、災害派遣のうち毎年最も多く行われている活動、「急患輸送」です。
離島などでは、急患が発生すると大きな病院に運ぶために飛行機やヘリコプターを使わなければならないことがあります。主に消防やドクターヘリが担当するのですが、夜間や悪天候などの条件下では、自衛隊の飛行機やヘリコプターが行うこともあり、ここ数年は毎年400件超の急患輸送が「災害派遣」として実施されています。

「災害派遣じゃないときは、普段なにをしているの?」と言われがちな自衛隊ですが、実は災害派遣だけでも、こんなにたくさんの活動をしているんです。

災害派遣そのものだけでなく、待機のための業務も

災害は、いつ起こるか分かりません。そのため、「災害派遣」もいつ行うことになるか分からず、常に待機体制を整えておく必要があります。
そこで、自衛隊は「ファスト・フォース」という名前の「初動対処部隊」を全国各地に置いています。
陸上自衛隊では、車両、ヘリコプター、化学防護、不発弾処理の体制を、海上自衛隊では艦艇や哨戒機、救難機を、航空自衛隊では救難機や輸送機を、そしてもちろん、それに関わる多くの隊員が「常に、いつでも出動できる」体制を取っているんです。

541件(平成27年度)の災害派遣、そして災害に備えた「ファスト・フォース」……こういった「災害のための活動」の他に、これまでお勉強した
①国防の活動
②国防や災害時の活動ための訓練
③活動や訓練のための業務
が、「自衛隊が普段行っている活動」です。

これらの活動はあまり知られていないので、「自衛隊って災害のとき以外はヒマそうだよね」なんて言われることもあるんですが、部隊や時期によってはなかなかの多忙になることがあります。
自衛官との婚活を希望されるみなさんは、「こんな活動もあるんだ」「災害じゃなくても忙しいこともあるんだ」ということをぜひ頭の片隅に置いておいてくださいね。

画像引用:陸上自衛隊HP海上自衛隊HP航空自衛隊HP
岡田真理のほじくりコラム(毎週金曜更新) >> こちら

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2017-06-22 | 女子にも分かる自衛隊

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