女子にも分かる自衛隊

今さら聞けない素朴なギモン~自衛隊って普段はなにをしているの?【3】


国防や災害時のための訓練……検定、競技会、そして「演習」

自衛隊は災害時ではないときはなにをしているのか?
自衛隊が普段している活動、
①国防の活動
②国防や災害時の活動ための訓練
③活動や訓練のための業務
のうち、前回は「②国防や災害時の活動ための訓練」から、
〇自衛隊は「万が一」に備えていつもいつも訓練をしている
〇訓練のモチベーションを上げ、レベルアップを図るために、自衛隊には「検定」「競技会」というシステムがある
というお話をしました。今回はその続きです。
前回、
「野球選手やサッカー選手と違って、自衛隊の場合は試合(有事や災害)がいつ行われるか分からない」
と書きました。
ですので、「検定」「競技会」というシステムで訓練のモチベーションを上げ、レベルアップを図っているのですが、それ以外にも大事なものがあります。
それは、「演習」です。

「万が一」を想定して行う、〝練習試合〟

「演習」とはなんなのか……ざっくりいうと、「日本が大変なことになったと想定して行われる訓練」です。
例を挙げると
・◯◯地区が武力攻撃を受けた
・◯◯地区が占領された
・◯◯地区でこんな災害が発生した
という「想定」のもと、じゃああの部隊はこんな活動をしよう、一方でこの部隊はこんな支援をしよう、といったことを実際にやってみる……という訓練を「演習」と呼んでいます。

野球選手やサッカー選手も、公式な試合ではない「練習試合」をしたりしますよね。自衛隊の「演習」も同じようなものだと考えてください。

演習で覚えておくと便利な用語、「状況」

と、ここで自衛官との交際や結婚を考えている方に、ぜひ頭に入れておいて頂きたい言葉があります。
「演習」という単語も、自衛官とお付き合いをしていると「演習だからしばらく会えないよ」といったようによく使われると思うのですが、もうひとつ重要な単語があります。
それは、「状況」。

「状況」とは、演習などの訓練で繰り広げられる
・◯◯地区が武力攻撃を受けた
・◯◯地区が占領された
・◯◯地区でこんな災害が発生した
といった「想定の世界」のこと。
少し難しいですね。では詳しく掘り下げましょう。

現実世界と想定の世界を区別するための「状況」ワードあれこれ

「◯◯地区が占領された」という想定で演習を行っていても、もちろん現実世界ではそんなことは起きていません。ですので、「想定の世界」を「状況」と呼んで、区別をしているんです。

例えば「状況中」という言葉。
これは、「想定の世界の中にいる」という意味です。演習している場所は、現実世界ではなにも起きていませんが、想定の世界では戦闘中だったりするので、「状況中」の場合はそれなりの行動を取らなければなりません。

映画や総火演にも出てくる「状況開始」「状況終わり」

そして、「状況開始」「状況終了(状況終わり)」という言葉。
これは、「今から想定の世界に入るよ」「想定の世界はここまで。現実世界に戻るよ」という意味です。自衛隊モノの映画でも出てくることがありますので、覚えておくと作品がより深く楽しめるかもしれません。
ちなみに、この「状況開始」、「状況終わり」は、毎年8月に行われる「富士総合火力演習(通称:総火演)」でも聞くことができます。
通常、総火演は前段と後段の2部構成になっているんですが、後段の最初と最後に放送される言葉をよく聞いていると、「状況開始」「状況終わり」とアナウンスがあります。それぞれを表す専用のラッパ付きです。

総火演の後段は、「想定」に基づいた訓練が展示されます。近年は、「敵部隊が占拠した日本の離島を奪還するため、陸海空自衛隊が統合作戦を行う」という想定が多く、さまざまな火砲や車両、航空機を使い「どうやって占拠された離島を奪還するのか」を見ることができます。
総火演でのこの「想定」も、「状況」です。ので、ちゃんと「状況開始」「状況終わり」と言われているわけです。

「状況中」なんだけど「状況ではない」場合の、「状況外」

ちなみに、「状況中」の反対語は「状況外(じょうきょうがい)」です。これは、「状況中の場面、場所なんだけど、状況には関係していませんよ」という意味。少しややこしいですね。

例えば、私は「状況中」の訓練にお邪魔して取材をすることがあるのですが、このとき私や取材スタッフは「状況外」とされます。
状況中にいる自衛官は、戦闘中に不審者が現れたら警戒をします。ひょっとしたら敵がやってきたのかもしれませんし、そうなると攻撃をされる可能性もあるからです。
ですので、私のような取材者が現れると、「不審者発見」に即した行動を取らなければならないのですが、「その必要はないよ。取材をしている人間だよ」ということを分かってもらうために「状況外」という言葉でそれを伝えたりします。

学校の避難訓練も、いうなれば「状況」

「状況」は、学校などで行われる避難訓練、防災訓練を想像してもらうと分かりやすいかもしれません。
学校の避難訓練では、授業中に非常ベルが鳴り「調理実習室で火災が発生しました」という放送が流れたりしますよね。そしてみんなで校庭に避難をする……といった訓練が、定期的に行われていると思います。

この「調理実習室で火災が発生しました」は、自衛隊式にいうと「想定」です。
そして、この想定の元に行われる避難訓練が「状況」です。

訓練の始まり、非常ベルの音が「状況開始」の合図で、校庭に避難した後、校長先生からの「〇分かかりました。おしゃべりしてる人がいました。ちゃんと真面目に訓練しましょう」などなどのお話があったりして、「では、教室に戻りましょう」が「状況終わり」。
訓練中、学校だよりに掲載するために訓練風景を撮影している先生がいたら、その先生は「状況外」です。
……と、こんな感じで「状況」がどういったものなのかなんとなくお分かりいただけましたでしょうか?

緊迫感あふれる自衛隊の「状況」。訓練はこんなふうに繰り返されます

学校の避難訓練だと、「訓練だなー」といった感じで「本物の火災」のような緊迫感はそれほどなかったりすることもあるかと思いますが、自衛隊の「状況」は大真面目です。気迫がこもっています。
以前、取材させて頂いた「状況」は、「本当に今ここは戦場なんだな」と感じるくらい緊迫していて、銃を持った敵兵役の部隊が攻撃してくると恐怖を感じるほどでした。
「想定」で作られる「状況」ですが、自衛隊は常に真剣に訓練を行っていて、常に「万が一」に備えているんです。

……と、前回、前々回と「②国防や災害時の活動ための訓練」のお話をしました。
検定や競技会、そして演習。これらは定期的に行われていて、検定や競技会、演習で成果が発揮できるように、日々の細かな訓練が行われています。だから、自衛隊は毎日毎日訓練ばかりやっているんですね。

そしてさらに、
③活動や訓練のための業務
もあるんですが、こちらはまた次回。

ナゾな行動の多い自衛官。その背景をぜひ頭に入れておきましょう!

自衛官と交際や結婚をすると、きっと「検定」、「競技会」、「演習」といったワードが出てくることがよくあると思います。
夜遅くまで訓練をして時間が合わなかったり、ギョッとするようなアザだらけになって帰ってくることもあるかと思います。長期間の演習や状況中はスマホが触れないので、音信不通にもなります。
(音信不通は、「①国防の活動」でも同様です)

ナゾな行動が多い自衛官ですが、「検定」、「競技会」、「演習」のワードを頭に入れておくと、「こんな感じで訓練をがんばってるんだな」と理解に役立つかもしれませんね。

岡田真理のほじくりコラム(毎週金曜更新) >> こちら

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2017-06-03 | 女子にも分かる自衛隊

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