ヘリコプターから見る、陸・海・空の役割
クイズ！ ヘリコプターパイロットの所属は？
突然ですが、クイズです！
―あなたはある自衛官に出会いました。あなたが「どんなお仕事をしているんですか？」と聞くと、その自衛官は「ヘリコプターのパイロットです」と答えました。では、この自衛官の所属は次のうちどれでしょう？
①陸上自衛隊
②海上自衛隊
③航空自衛隊
シンキングタイム、スタート！
ヘリコプターは空を飛ぶから航空自衛隊？
それでは正解発表です。ヘリコプターパイロットの所属は陸上自衛隊なのか、海上自衛隊なのか、航空自衛隊なのか。答えは、「どの可能性もある」です。
……クイズとして成立していないクイズを失礼しました。というのもコレ、結構勘違いをされている方が多いんです。
「どんなお仕事をしているんですか？」
「ヘリコプターのパイロットです」
「じゃあ航空自衛隊ですか？」
「いえ、陸上自衛隊です」
「え？ヘリコプターなのに？ヘリコプターなのに航空自衛隊じゃないんですか？」
という感じで。
ヘリコプターは空を飛ぶ乗り物です。なので、「ヘリコプターのパイロット＝航空自衛官」と思ってしまうのも仕方ありません。
陸、海、空の違いは乗り物？それとも……？
（陸上自衛隊公式HPより）
自衛隊には陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊があります。
この3つが存在することは知っていても、「じゃあ具体的にどう違うの？」は知ってるようで詳しくは知らない……なんとなーく、「海上自衛隊は船で、航空自衛隊は飛行機。陸上自衛隊は車や戦車とかかな？」というイメージを持たれている方、多いんじゃないでしょうか。
そこで今回は、知っておくと自衛官との会話に役立ちそうなマメ知識、「陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊の役割」と「役割によるヘリコプターの違い」についてお話をします。
海にも飛行機が、陸にも船が、空にも車が。
（海上自衛隊公式HPより）
「海上自衛隊は船で、航空自衛隊は飛行機。陸上自衛隊は車や戦車とかかな？」
このイメージは間違ってはいないんですが、細かく言うと正解ではありません。
船は海などの水上を走るものですが、海上自衛隊だけでなく陸上自衛隊にもあります。飛行機は空を飛ぶものですが、航空自衛隊だけでなく陸上自衛隊にも海上自衛隊にもあります。車は陸を走るものですが、陸上自衛隊だけでなく海上自衛隊にも航空自衛隊にもあります。でも、戦車は陸上自衛隊だけですね。
さー、ややこしくなってきました。
「どこにあるのか」ではなく、ココに注目！
・陸にあるもの＝陸上自衛隊
・海にあるもの＝海上自衛隊
・空にあるもの＝航空自衛隊
とイメージを持たれがちなんですが、こう考えるとややこしくなってしまいます。
ので、「陸にある、海にある、空にある」といった「どこにあるのか」ではなく、「どこを守る役割なのか」で考えてください。
・陸を守る役割＝陸上自衛隊
・海を守る役割＝海上自衛隊
・空を守る役割＝航空自衛隊
です。
陸・海・空それぞれの役割を持つ、ヘリコプター
「どこにあるのか」で考えると、「ヘリコプターは空にあるから、航空自衛隊じゃないの？」と思ってしまいます。
でも実際には、陸上自衛隊にも海上自衛隊にも航空自衛隊にもヘリコプターはあります。
なぜかというと、「陸を守る役割のヘリコプター」、「海を守る役割のヘリコプター」、「空を守る役割のヘリコプター」が陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊それぞれに存在するからです。
「どこにあるのか」ではなく、「どこを守る役割なのか」で考えると……「なるほど」と少し理解できてきませんか？
実はこんなにある！陸上自衛隊のヘリコプター
（陸上自衛隊公式HPより）
例えば、陸上自衛隊。
陸上自衛隊には、OH-1、OH-6、CH-47、AH-1、AH-64、UH-1、UH-60という種類のヘリコプターがあります。……と、アルファベットと数字が羅列された名前を見ると一気に興味が失せると思いますので（特に女子のみなさんは）、覚える必要はまったくありません。
でも、少しだけ解説をすると……「OH」、「CH」、「AH」、「UH」といった、二つ目に共通する「H」は「ヘリコプター（Helicopter）」の頭文字です。要は、「Oのヘリコプター」、「Cのヘリコプター」、「Aのヘリコプター」、「Uのヘリコプター」という意味です。
そしてこのOとかCはそれぞれ、
・O：Observation（観測）
・C：Carry（輸送）
・A：Attack（攻撃）
・U：Utility（多用途）
の頭文字で、ヘリコプターの持つ役割を表しています。
ので、「OH」は「観測ヘリコプター」、「CH」は「輸送ヘリコプター」、「AH」は「攻撃ヘリコプター」、「UH」は「多用途ヘリコプター」となるワケです。
……と言っても、本当に覚える必要はありませんからね。ただ、災害時のニュースを見ているときなどにCHが飛んでいたら「輸送ヘリコプターだな。物資や被災者を運んでいるのかな」とか、OHが飛んでいたら「観測ヘリコプターだな。被害の様子を確認しているのかな」といったことが分かったりします。
※「AH」は正確には「攻撃ヘリコプター」ではなく「戦闘ヘリコプター」や「対戦車ヘリコプター」という名前ですが、もう本当に覚える必要はありませんので、「そういうものがあるのね」と理解してください。
役割がたくさんだから、ヘリコプターの種類もたくさん
観測、輸送、攻撃、多用途……と、いろんな役割がある陸上自衛隊のヘリコプター。
これらはすべて、「陸を守る役割」のヘリコプターです。どこかから日本が攻撃されたときに、このヘリコプターが日本を守ったり、日本を守る活動をする陸上自衛隊の部隊をアシストしたりします。そして、その能力を活かして、災害時には救助活動をしたり、被災者や救援物資を運んだりします。
また、これらのヘリコプターとは別に、「EC-225LP」という特別なヘリコプターがあります。天皇陛下や国賓の方々が搭乗するためのもので、こちらもテレビで見ることがありますからぜひチェックしてみてください。
海上自衛隊には、海の役割のヘリコプターが
（海上自衛隊公式HPより）
続いて海上自衛隊。海上自衛隊には、「SH」、「MH」、「MCH」、「UH」、「CH」、「OH」があります。
「SH」の「S」は「Submarine（潜水艦）」の頭文字。「哨戒ヘリコプター」と呼ばれていて、海の中に怪しい潜水艦がいないかパトロールするためのヘリコプターです。
そして「MH」、「MCH」の「M」は「Multimission（多用途任務）」の頭文字。「掃海ヘリコプター」と呼ばれていて、海の中に置かれている機雷（船を破壊する爆弾。海の地雷）を取り除くために使うヘリコプターです。
そして「UH」、「CH」、「OH」は陸上自衛隊にも出てきましたが、海上自衛隊の場合、「UH」は「救難ヘリコプター」（海上で遭難した人を救助するためのヘリコプター）として、そして「OH」は「練習用ヘリコプター」（海上自衛隊のヘリコプターパイロットを目指す訓練生が、練習に使うためのヘリコプター）として使われています。
すべて、「海を守る」ためのヘリコプターですね。
航空自衛隊なのに？！ヘリコプターは……
（航空自衛隊公式HPより）
そして航空自衛隊。航空自衛隊にあるヘリコプターは「CH」、「UH」の2種類だけです。「空を飛ぶから、航空自衛隊のもの」と思われがちなヘリコプターですが、実は陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊の中では、ヘリコプターの種類が一番少ないのが航空自衛隊なんです。その代わり……と言ってはなんですが、飛行機の種類は航空自衛隊が一番たくさんあります。
航空自衛隊の「CH」は陸上自衛隊と同じく「輸送ヘリコプター」、「UH」は海上自衛隊と同じく「救難ヘリコプター」として使われていて、「空を守る」航空自衛隊の活動をアシストしています。
覚えなくても大丈夫！「知る」ことで役立てましょう
さて今回は、ヘリコプターを例に取って、
・陸を守る役割＝陸上自衛隊
・海を守る役割＝海上自衛隊
・空を守る役割＝航空自衛隊
というお話をしました。少し難しかったでしょうか。
自衛隊にはたくさんの人がいて、たくさんの乗り物があるのでとても奥が深く、「なぜ？」を知ろうとするとすぐにややこしくなり「難しくてわからない！」に、よく遭遇します。
でも、本当にすべてを覚える必要はありませんので、「そういうものがある」、「そういう仕組みになっている」ことだけでもちょっと知っていれば、自衛官さんたちとの会話にきっと役立つと思います。
そして「CH」や「UH」など、陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊に共通するヘリコプターでも、陸・海・空によって塗装の色や柄が違ったりします。こちらも、駐屯地・基地のイベントに行って「私は、CHの色と柄は陸上自衛隊よりも航空自衛隊の方が明るくて好きかも！」などなど、自分の好みをぜひチェックしてみてください。
ちなみに、ヘリコプターパイロットは略して「ヘリパイ」と呼ばれています。もし、パーティーなどでヘリコプターパイロットの方と出会ったら「ヘリパイさんですね」と親しみを込めて呼んでみてください。「なんで知ってるんですか？」と距離が少し縮まるかもしれませんよ！
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